テニス 股関節を使った「タメ」の作り方【動画有】
テニスのショットを打つ時に使われる「タメ」を作るとはどういうことなのか紹介します。
スポーツでときどき使われる「タメ」という言葉、もっと「タメ」を作って!「タメ」を使って!などと指導時に使われることが多いのですが、「タメ」って何のことなのでしょうか?
また、テニスで腰を回転させて打つという言い方をするときもありますが、どのようにしたら腰を回転させて打てるのでしょうか?
実は、腰ではなく股関節を回転させることで「タメ」は作られ、自分の持っている力を最大限に発揮させることができます。
そうした股関節を使った「タメ」についてお伝えします。
「コアスイング」を使うと効率のいいストロークが打てます!>>> 少ない時間でも上達するテニスの磨き方
「タメ」とは何か?
「タメ」とは、溜めのことです。
力などを発揮するのをぎりぎりまで押さえて、たくわえておく。
では、何をタメているのか?
というと、筋肉にエネルギーをタメているのです。
スポーツで使う場合、タメた筋肉のエネルギーを上手く使って運動するという意味で使われています。
日常でも、タメは意識せずとも、皆さん使っているはずです。
たとえば、垂直跳びの動き。
高く飛ぼうとしたら、一度しゃがんでから反動をつけていますよね?
一度バネを押しつぶしてから、伸びるような動きをしていると思います。
垂直跳びのバネのような動き
テニスでも、そうしたバネが伸びるような動きを使って、力強い回転を生み出しています。
そうした「タメ」を股関節に着目して、説明していきます。
腰ではなく、股関節を回す
テニスのストロークやサーブで、「タメ」は柔らかい股関節の動きから生み出されます。
より強く鋭いスイングをしようとしたら、上半身だけの回転よりも腰回転がリードした「下半身からの回転のねじれ」を使った反動動作をより有効的に使う必要があります。
上半身と下半身のねじれ
下半身も含めた体全体が大きくねじれるからこそ強力なひねりができて、身体の全体のバランスが安定します。
この動作によって、筋肉のエネルギーが効率よく使われるので、少ない力で大きな運動をすることができます。
フルスイングでもバランスを崩すことがなく、ヘッドスピードもアップします。
「下半身も含めた回転のねじれ」というのは、股関節をひねることです。
腰を回転させようとするときに、よくある間違いは
お腹を中心に上半身を「ねじる」ことです。
もともと、腰骨である腰椎は回るものではありません。
これは、骨盤から上のみのねじりとなり、筋肉や脊柱をひねるために腰背部に負担のかかってしまう動作です。
腰を痛めてしまう原因になりかねません。
腰をひねろうとすることで腰痛に
股関節の構造は、下図のようになっています。
大腿骨の先端の骨頭が臼状のくぼみ(寛骨臼 かんこつきゅう)にはまっている構造です。
ここが回旋(内外旋)することで「腰の回転」が生まれます。
股関節の構造
画像 CEOのゴルフ
臼状関節は、脚を前後(屈曲、進展)、左右(外転、内転)に動くことができますし、
回旋する(外旋、内旋)動きもできます。
関節の動きについては、こちらの記事を参考にしてください
腰は、自分で意識して回そうとするものではなく、股関節の回転に連動して動いているだけなのです。
この関節が機能することで、異なる下半身の動きと上半身の動きをスムーズにつなげてくれるのです。
股関節をひねることで、上体もこれに連動する形で引っ張られます。
これがスイングにおける回転運動となるのですが、日頃、股関節をあまり使わないでいたり、意識せずにスイングをしてきた方には最初は難しいかもしれません。
股関節の辺りを動かすことになれていないので、少しずつ意識することや使う回数を重ねていくことでスムーズに使えるようになっていきます。
股関節で「タメ」を作った打ち方
小手先だけのショットではなく、本当に身体を使ってスイングしたいなら、股関節で「タメ」を作って打つことをおススメします。
回転運動をフルに活用すれば、本当に少ない力でカンタンに多くのパワーがボールに乗ってくれます。
その感覚をつかんでしまえば、少ない力で簡単に当たりが厚いボールを打つことができます。
では、具体的にどのようにして打っていくのかのイメージやポイント、練習方法を説明していきます。
イメージを持つ
まずは、身体の使い方のイメージをつかむようにしましょう。
ストロークの場合、大きな重いボールを斜め上前方に投げ上げるイメージです。
この動きを身につけるために、下の画像のように2人一組でボール投げをするのが良い練習方法です。
右にねじるのであれば右の股関節を、左にねじるのであれば左の股関節を中心に使うようにします。
フォアハンドストローク、バックハンドストロークをイメージして、左右のねじりを使って投げてみましょう。
ボール投げでイメージ確認
股関節のタメ チェックポイント。 膝と足の裏に力が溜まり、最後に股関節に力が入っているかを確認して、捻り戻しを意識して投げるようにしてみてください。
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3つのポイント
①膝を曲げる
ストロークの「股関節のタメ」を作るために大切なのは、「膝を曲げる」ことです。
膝を曲げないと、股関節が横方向にしか入らないので、重心の位置が高くなってしまいます。
膝を曲げない状態
そうすると、身体を回転させることはできますが、横の動きだけにしかならないので、ボールにパワーを出すことができません。
「膝を曲げる」ことで、股関節がより多く入って股関節にパワーをためることができるようになります。
膝を曲げた状態
股関節と足首を折って軽く膝が曲がった状態となるようにして、タメを作ることを意識しましょう。
②膝と爪先の方向
膝を曲げたときの注意として、大切なのは
膝の向きとつま先の向きは同じ方向を向くようにする
(もしくは、膝のほうが若干内側に入っているようにする)
ことです。
膝の向きとつま先の向きが同じ方向を向くようにすると、パワーロスが少なく、ひねり戻しも簡単にできます。
足の内側に力がたまるようにイメージをしてみてください。
足の状態を確認する
より大きくひねろうとして、下の画像のようにひねってしまう人がいますが、そうなるとパワーロスになってしまいます。
また、足の重心が外に流れてしまうと、上半身が外に流れてバランスが崩れやすくなってしまいます。
外重心によるバランスオフ
③軸足(後ろ足)の内側にタメる
タメを作るのは、軸足側になります。
右利きの方のフォアハンドであれば右足の股関節。バックハンドであれば左足の股関節。
必ず、膝と爪先の方向が合うようにしましょう。
膝が割れてしまう(膝と爪先の方向が違う)と力が入りません。
しっかりと軸足の内側に力を入れて、足で地面を蹴ることで起きる「膝の曲げ伸ばし」の動きを意識しましょう。
右膝の曲げ伸ばし
左膝の曲げ伸ばし
身体全体を使って強烈なボールを打つためには、股関節で作ったパワーを全部伝えて力強く上半身を回転させる必要があります。
そのために、準備段階のテイクバックでは膝を曲げつつしっかりと上半身を捻ることを意識してください。
そこから膝を伸ばした瞬間に、上半身のひねりも開放しラケットを振っていきます。
捻り戻しは膝にためたパワーを全部開放することで威力が倍増します。
一つひとつの動きを意識すると、これまでの説明のようになってしまいますが、実際の動きはバラバラのコマ送りのようなものではなく、一つの運動が次へとスムーズへとつながっていく「運動連鎖」によって行われていきます。
運動連鎖による動き 股関節、足首を曲げる⇒膝が曲がる⇒股関節を回転させる⇒地面を蹴る⇒膝が伸びる⇒上体が回転する⇒肩→肘→手首 スイングする
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身体全体を使うスイングは ① 股関節で「タメ」を作る ② タメたパワーを上半身のひねり戻しに使う(回転運動) ③ 運動連鎖の中で自然にタメ戻しを行う |
といった形をとれるようにします。
余裕があって打てるときは、前足を踏み込むことでさらに回転の始動に力を与えることができます。
股関節を使ったひねり戻しができるようになると、これまでよりも体の回転が大きくなるので、その分体が回りすぎて体が開いてしまうかもしれません。
その場合は、腰の鋭い回転を全部ラケットに伝えるために、前足で壁を作って体の回転を途中で止めるような意識を持つことで回りすぎを防ぐことができます。
サーブも「タメ」を使って
サーブも「タメ」が重要です。
タメを作ることで、安定感と伸びのあるサーブを打つことできるようになります。
股関節にしっかり重心が乗る状態=「タメ」です。
「タメ」を作って、それを戻す動きを運動連鎖の中で行うことで、スイングスピードの速い質のいいサーブを打つことができるようになります。
運動連鎖を使ったサーブについては、こちらをどうぞ
こんなに楽にサーブって打てるんだ!サーブを身につけるには…>>> 少ない時間でも上達するテニスの磨き方はこちら
練習方法
まずは、ポイントを意識して、一つひとつ確認しながら素振りから始めてみてください。
素振りの練習方法については、こちらの記事を参考にしてください。
次に、「タメ」を作ることを意識して、実際にボールを打っていきましょう。
ショートラリーから初めて、股関節からの腰の回転を意識した小さいスイングで、まずは良いインパクトからスイングを作っていきます。
インパクトに集中して、ラケットのフェース面や、下半身のパワーの乗り方や膝の曲げ伸ばしを細かく見ながらスイングをし続けましょう。
ショートラリーの練習方法については、こちらの記事を参考にしてください。
感覚がつかめてきたら、ロングラリーをします。
股関節を使った動きの感覚は、簡単につかめる方もいますし、上手くつかめないという方もいます。
しかし、続けていけば必ずわからなかったものがわかるようになり、わかっていた人でも、意識をそこに向けることでより深く理解ができるようになります。
股関節を使えると重心も安定してバランスもよくなり、ショットも安定感が上がります。
ぜひ続けて練習をして、伸びるショットが打てるように練習していきましょう!
[フォアハンドストローク]
[バックハンドストローク(片手)]
[バックハンドストローク(両手)]
下の動画内では、河合校長が解説、デモンストレーションをしています。
「股関節にタメを作る(コアスイングに必要な事)」Tennis Rise テニス・レッスン動画
まとめ
プロの打ち方を見ると、ほとんどがシャープな「回転運動」を行っています。
そうした打ち方をしようとして、腰を回転させて打つという言い方をされることが多いために、腰を痛めてしまう人が結構います。
腰ではなく、股関節を使って回転させるのが正解です。
股関節が使えると、重心も安定してバランスもよくなり、ショットも安定感が上がります。
股関節を使った回転運動でショットが打てるようになるとショットレベルがみるみるアップしていきます。
意識しなくても自然に自分の動きにできるようになるまで練習を重ねていってください。