テニスの正しく効果的な「水分補給」の仕方
テニスは、特に夏場になると大量の汗をかきます。
適切な水分補給をしなければ、脱水症状や熱中症、けいれんなどを起こしてしまいます。
また、健康や安全面からだけでなく、試合でのパフォーマンスを維持するためにも、正しく効果的な水分補給の仕方を知っていただきたいと思います。
これまでの水分補給は、運動の最中のみの補給とされてましたが、最近は新しい水分補給の考え方の運動前からも補給する「グリセリンローディング」が注目されています。
この記事を読んで参考にして下さい。
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この記事の目次
水分補給の重要性
一日で失われる水分
一昔前の部活動では、先輩や指導者が「のどが渇いても飲んではいけない!」という危険な指導がまかり通っていました。
かえって、疲れてしまうからといった理由だったように思いますが、今では様々な実験で飲んだ方が良いことが立証されています。
のどが渇いても飲むなって…!?
体の大部分は、水分
体の大部分は、水分が占めているとよく言われていますが、その割合は成人男性で約60%、成人女性で約55%に及びます。
画像 株式会社水化学
この水分は、体の中で栄養素を体の隅々にまで運んでくれたり、不要になった老廃物を体の外に排出する、体温を調整するといった大切な役割を果たしています。
体に含まれている水分のことを「体液」と言います。
体液の主成分は、水ですが、そのほかに電解質(ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンなど)とブドウ糖、たんぱく質、尿酸などの非電解質から構成されています。
生命を維持するために必須なものとして、水分と塩分と言われますが、体液はまさに水分と電解質(塩分は水に溶けると電解質になります)から成り立っています。
水分と電解質は、どれだけ失われている?
成人がふつうに暮らしていて、どれだけの水分を取って(IN)、どれだけが失われているのか(OUT)をご存知でしょうか?
平常時のIN、OUTの収支バランスは、大塚製薬HPの説明から
私たちは、ふつうに生活していても、尿や汗、呼吸によって、1日に2.5ℓもの水分を、身体から失っています。これに対して、飲み物や食べ物から入る水の量も、1日あたり2.5ℓです。
だから、体液はいつも一定の量に保たれているのです。たくさん汗をかいたときに、のどが渇くのは、減った分の体液を回復させようとする、身体の働きによるものなのです。
平常時の水分出納
図、文章~大塚製薬
一日に2.5ℓの水分と言っても、それぞれの体重にもよります。
成人の1日の水分喪失量の計算目安としては、体重で割ると40mL/kg/日です。
では、電解質は何がどのくらい失われるのでしょうか。
- ナトリウム(Na)は2mEq※/kg/日
- カリウム(K)は1mEq/kg/日
- クロール(Cl)は2mEq/kg/日
が失われるといわれています。
1日の水・電解質の喪失量(成人)
※mEq(ミリ当量、ミリ・イクイバレント、メック)は電解質の量を表す単位で、物質量(mmol)×イオンの価数
画像と一部文章 ナースプレス
スポーツ時の水分損失
スポーツをしている時は、平常時よりも失われる水分は多くなりますが、運動の強度や気温によっても、失われる水分量は異なります。
テニスの場合の水分損失量を見つけることができなかったので、シングルスなのかダブルスなのかによっても、運動の強度が異なりますが、他のスポーツのデータを参考にしてみて下さい。
スポーツ時の水分喪失量
図 大塚製薬
気温が上がってくると、水分が排出されるペースが早くなりますので、個人の体質や運動強度、その日の湿度などにもよりますが、1時間で500~1,000mlの水分が失われています。
1時間で500~1,000mlの水分が失われている
どの位の水分が失われると、体にどのような症状が現れるかというと
1% | 大量の汗、喉の渇き |
2% | 強い乾き、めまい、吐き気、ぼんやりする、重苦しい、食欲減退、血液濃縮、尿量減少、血液濃度上昇 |
3% | 3%を超えると汗が出なくなる |
4% | 全身脱力感、動きの鈍り、皮膚の紅潮化、いらいらする、疲労および嗜眠、感情鈍麻、吐き気、感情の不安定(精神不安定) 無関心 手足のふるえ |
20%で生命の危機、死亡となります。
※体重全体の割合でいうと、体重60㎏の場合で1%が600mlです。
テニスは、運動強度の強いスポーツですので、水分が体から出ていくのと同時に体内から色々な成分が排出されてしまいます。パフォーマンスが低下しないために、それを補うための飲料が必要になります。
さらに、日本体育協会による資料がありました。
こちらの資料の注意書きにもありますが、発汗することで体重が減少します。
試合や練習の前に体重を測ってみて、体重が減っていたら水分補給が不足している証拠です。
練習(練習)前後の体重測定をおススメ
水分補給の必要性は、人によって大幅に異なります。
どの位の水分補給をしたら良いかの目安を知るために、一度測ってみるようにしましょう。
発汗率の計算方法
発汗量(L)=〔練習前体重(KG)-練習後体重(KG)〕+飲水量(L)
|
その日の気温、湿度、体調、ストレス度などによっても必要量は日々異なりますので、あくまで目安ですが、その分量は取るように心がけましょう。
「のどの渇き」って?
「のどが渇いたな」と思ってから飲むは、手遅れと知っていましたか?
「のどが渇いた」は、体の中から必要な成分がかなり減っていって、もう脱水症状になりかけていますよというサインです。そこから、いくら水分を取っても、体内に吸収されるのに時間がかかるので手遅れなのです。
のどが渇いたから飲むでは手遅れ
テニススクールのレッスンの合間合間に、コーチが生徒に「飲み物を飲んで下さい」と呼びかけても飲まない方がいらっしゃいます。
のどの渇きは体の水分バランスがマイナスとなって、水分を必要としているという生物学的シグナルです。
それを感じないからといって、水分補給が必要ないということではありません。
「のどの渇き」は、水分摂取の正確な指標とはならないのです。
のどが渇く前に飲む
のどが渇いてから、ガブ飲みをする方が結構いらっしゃいますが、それではお腹の中に水分が溜まってしまって、その後に運動するのは苦しくなります。
適切なタイミングと量を取るようにしましょう。
もっと上手くなりたい、もっと試合に勝ちたいと思っているならば |
どうやって水分を補給する?
自分の一日の水分補給量の目安がわかったところで…
そもそも「水分補給」の目的というのは、体の水分を正常状態にすることです。
摂取した水の量と失われた水の量の収支バランスを保つということですね。
いつ飲むか
運動前 | 20~30分前、500mlのペットボトルを半分から1本程度飲んでおくと運動中ののどの渇きがかなり抑えられるようになります。 |
運動中 | こまめに飲むようにして、のどが乾かない状態を常に保つようにします。 |
運動中は、こまめに補給
何を飲むか?
一般的には、水かスポーツドリンクを飲まれる方が多いと思います。
食事をきちんと取っている方で、運動時間が1~1時間半位であれば水だけで充分とのデータもあります。
◆スポーツドリンク
しかし、スポーツドリンクを飲む方がエネルギー切れとなることがありません。
汗には、水と電解質が含まれています。
運動時の発汗によって「脱水症状※」に陥りやすくなりますので、水分と同時に失われた電解質を補わずに水分のみを過剰に補充することはかえって危険です。
発汗による脱水症状は避けたい
そうした意味で、水分と電解質を一度に摂取できるスポーツドリンクを利用した方がよいと言えます。特に、長時間のプレーだったり、気温が高い場合は必要となります。
※脱水症状は、体重の2%以上の水分が失われた状態です。
水だけを飲んでいると、まれに「水分過剰※」状態となり、生命に危険を及ぼすおそれのある電解質異常の原因となります。
※水分過剰は、長時間の運動の際、汗から失われた電解質が補われないまま過剰に水分補給した状態です。
ここで気をつけたいのは…
スポーツドリンクと言っても、メーカーや商品によっては濃度が濃すぎて、逆に体の中の水分のバランス、ミネラルのバランスが崩れてしまうことがあります。
飲むものの濃度をしっかり見極めて飲む必要があります。
◆お茶、カフェイン飲料
お茶を飲む人も多いですが、コーヒー、紅茶、緑茶などのカフェインの入ったものは、利尿作用が働くために、より水分が体の外に出やすくなってきますので水分補給には適さない飲み物と言われてきました。
ただ、こちらについては近年の研究結果で「利尿作用」はあるものの、カフェイン飲料と水を摂取して比較しても、尿量が大差ないとの結果が出ています。
また、腎臓が健全な状態であれば、カフェインによる利尿によって、電解質(ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどのミネラルイオン)が過剰に排出されることはないそうです。
とはいえ、コーヒーやお茶に含まれるカフェインの過剰摂取が心配ですので、1日の摂取はカフェイン400㎎(コーヒー約3~4杯)まで、一度の摂取量も200mgに留めておきましょう。
また、糖分の入っているカフェイン飲料となると、糖分の摂取量オーバーになりやすいので、なるべく無糖のものを飲むように。
1日の摂取はカフェイン400㎎(コーヒー約3~4杯)まで
おすすめは、麦茶です。
麦茶には、カフェインが含まれておらず、カリウムやリン、ナトリウムなどの失われたミネラルの補給をすることができます。
カフェイン飲料✖?、スポーツドリンク○
自分で好みのドリンクを作って飲むのもおススメです。詳しくは、こちら
テニスのトッププロ選手が飲んでいるのは?
テニス大会の中継で、選手たちが水と思われる透明のドリンク、そのほかに赤や黄色のドリンク、エネルギー補給用のゼリー飲料を飲んでいる姿を見ることがありますか?
赤や黄色のドリンクは、選手それぞれの特製ドリンクで、即効性のエナジードリンクや持続性のあるドリンクです。
即効性のものは~ブドウ糖や果糖などの糖質が含まれたもの
持続性のものは~クエン酸、アミノ酸、各種ビタミン、食塩などのミネラル類です。
その試合の体調やセット数やコートの種類、対戦相手によっても、配合物を変えていると思われます。中継の試合途中で、選手陣営のコーチや彼女が作成している姿を見たことがあります。
テニス選手は、強度の高い運動を繰り返してプレーすることとなりますので、肉離れや攣りなどの筋肉系のトラブルを防止するためにも、電解質の多いドリンクを用意していると思われます。(選手それぞれ独自のものなので、市販はされていません。)
グリセリンローディング
ここまでは、運動前、運動中の水分補給について説明してきましたが、新しい考えの水分補給の方法が「グリセリンローディング」です。
日本では、まだなじみの薄い方法ですが、海外のオリンピック選手のほか、日本のプロテニス選手にも取り入れられています。
グリセリンローディングとは 試合前に水分を補給し、水分を蓄えた状態を作り、より脱水を防ぎ安全に優位に運動を行おうと考えられた水分補給方法 |
グリセリンが、水を引っ張り込む性質を利用して、体外に無駄に水分が排泄されるのを防ぎます。
そうしたグリセリンを薄めた水分を摂取することで、水分補給効果を長期化させ脱水を防ぐという方法です。
現在ある「グリセリンローディング」の製品としては、「凌駕スマッシュウォーター」「グリチャージα」「+αウォーター」などがあります。
いずれも粉末タイプのサプリです。
「凌駕スマッシュウォーター」
価格:2,160円 |
炎天下での運動時や長時間の運動時、水分が足りていないと感じる方、冬の寒い時期などにオススメのサプリメントです。
甘すぎずスッパすぎずとても飲みやすいのでどんなシーンでも活躍できます。
まとめ
私たちの体の成分の60%以上もが水分から構成されています。
適度な水分補給がきわめて重要なことではありますが、日常生活でも不足しがちですし、スポーツ選手はより脱水症状を起こしやすい傾向があります。
この記事を参考にして、水分補給の必要性を理解し、適切な水分補給を心がけていただきたいと思います。