ナチュラルガットの特徴って?(長所と短所)
Bablatが初めてテニス用のナチュラルガットを販売したのは1875年。
ローンテニス(近代テニス)が確立されたのが1874年、第一回ウインブルドン選手権が開催されたのが1877年。
テニス創成期から使われているストリング(糸)が「ナチュラルガット」なのです。
それから140年以上の年月を数えますが、いまだにナチュラルガットを超える性能をもったストリングは現れていないのが現状です。
ここでは、ナチュラルガットはどのようなもので、その長所、短所は何なのか、そしてどのような人に向いているかをお伝えします。
代表的なナチュラルガットの紹介もしています。
ガット選びに迷っている方、ぜひ参考にしてください。
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ナチュラルガットとは
ナチュラルガットは、動物の小腸を原料にしたストリングです。
ナチュラル=天然
ガット=腸
ですね。
ナイロンやポリエステルのように合成樹脂で作られたストリングはガット(腸)とは呼べないのです。
合成樹脂で作られたものは、正式には「シンセティックストリング」といいます。
シンセティック=合成 ストリング=糸 |
その昔、日本ではシープと呼ばれていました。これは羊の腸から作られていたからですが、現在では牛の腸が使われています。
ガットの原料は、「羊」から「牛」へと代わってきました
なぜ原料が羊から牛に代わったかというと、一つは長さの確保ということになります。
ウッドのラケットの面積は70平方インチほどでしたが、現在のラケットの面積は100平方インチが平均です。
そうすると、現在のラケットに張るための必要なガットの長さは12mほどになります。羊の腸ですと生の状態で20mほどの長さしかありませんので、下処理をして、よりをかけて乾燥させると12mの長さのガットを作ることが困難なのです。
この12mの長さを確保できるのは、牛の腸だったということです。
もう一つは、原材料の豊富さになります。
ナチュラルガットを1本作るのに、牛2頭分の腸が必要です。
100本作るのに200頭の牛が、1万本では2万頭の牛が必要なわけです。
羊では、その確保が難しいというのも牛の腸が使われるようになった要因です。
現在、羊を原料としたガットは、弦楽器用には作られています。
その特徴は、羊は柔らかい音がして音の鳴りやむのが早く、牛は固めの音がして長くなり続ける特性があり、羊は擦(こす)って音を出すバイオリン等に向き、牛は弾くハープやギターに向いていると言われています。
牛で作られたナチュラルガットは、すでに柔らかく包む感触があります。羊で作られたテニス用ガットは現在は手に入りませんので、牛との比較はできませんが、牛に比べてより柔らかく包む感じがしていたのかも知れません。
ナチュラルガットの長所
ナチュラルガットの長所 ☆打球感が良い ☆ボールが良く飛ぶ ☆テンション維持性が高い(伸びにくい) ☆打球音が良い |
ナチュラルガットに向いている人
ナチュラルガットに向いているのは、ボレーが得意なダブルスプレーヤーや、シングルスでもスライスを上手く使うプレーヤーに向いています。
■打球感が良い
ナチュラルガットの長所の一番目は、やはり打球感の良さでしょう。
インパクトでボールを包むようにホールドをして、でも、そこからの戻りがナイロンガットよりも早く、ボールがシュンと飛び出して行きます。
この性能が一番活かせるのがボレーです。
ネットプレーを得意とされているのでしたら、一度は張ってほしいガットです。
同じようにスライスも得意としています。
伸びて滑るバックハンドスライスがこれで手に入るかもしれません。
■飛びが良い
また、飛びが良いのもナチュラルガットの特長で、一番飛距離が出ます。
苦しい場面でも、面を合わせるだけで飛んでいってくれるので、不利になればなるほど、その恩恵が得られます。
守備にも強いナチュラルガットです。
■テンションの持ちが良い
そして、テンション維持性能の高さです。
飛ばす性能が落ちにくく、切れなければ半年は持ちます。
ポリガットが2週間、ナイロンガットが2ヶ月の寿命ですから、値段(実売価格4000円~8000円)は少し高めですが、その性能の良さを考えれば、そんなに高くはないのです。
■打球音が良い
ナチュラルガットの特長として、打球音が良いというのもあります。
弦楽器にも使われていますが、スコーンという抜けの良い、乾いた音がします。
これは、他の追随を許しません。
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ナチュラルガットの短所
ナチュラルガットの短所 ★雨に弱い ★切れやすい ★価格が高い ★張るのが難しい |
ナチュラルガットが合わない人
ナチュラルガットが合わないプレーヤーとしては、高速スイングでトップスピンをどんどんと打ち込んでいくグランドストローカーが挙げられます。
■取り扱いの注意(雨、湿気)
ナチュラルガットは、雨に弱いと言われています。
牛の腸を乾燥させているので水気を嫌うのですが、最近のナチュラルガットはコーティング技術の進歩により多少濡れても大丈夫になってきていて、昔のようにうどんのようなブヨブヨになることはなくなりました。
濡れても、うどんのような状態になることはなくなった
しかし、高価なので、長持ちさせなければなりません。取り扱いは丁寧にしましょう。
湿気のある状態でテニスをした後は、ラケットバッグから取り出して、新聞紙でくるんでおきましょう。
それと、湿気から守ろうと使った後もビニール袋に入れたままというのはもっての外です。なぜならば晴れていてもグリップに付いた汗が蒸発して、ビニール袋の中で湿気がこもるからです。
■切れやすいというものの・・・
ナチュラルガットは、切れやすいと言われます。
確かにポリエステルガットやナイロンモノフィラメントのガットよりは切れやすいですが、ナイロンマルチフィラメントのガットよりも切れにくいです。
これはなぜかというと、天然繊維なのでプラスチックよりも熱に強いからです。
たとえばオートバイのレーサーは、皮のツナギを着ていますが、転んだときに熱に強い皮が地面の摩擦熱から体を守ってくれるからなのです。
ポリエステルやナイロンはプラスチックですので、熱によって融けることで削れていくのですが、ナチュラルガットは熱で融けることなく、隣の糸と接することで筋繊維が少しずつ擦り切れていくのです。
ですので、ナイロンマルチフィラメントよりも切れやすいことはありません。
ナイロンガットについては、こちらの記事をご覧ください
ポリエステルガットについては、こちらの記事をご覧ください
■比重がほかより重い
見逃されやすい欠点としては、比重が重いということです。
ナチュラルガットの比重は1.36
ナイロンガットの比重は1.14ですので、直径1.30㎜の太さですと、約3g重くなります。
(ナイロンは約15g、ナチュラルは約18g)
ポリエステルの比重は1.38でナチュラルガットより比重が重いですが、1.20㎜のように細いガットがあります。
でも、ナチュラルガットは一番細いもので1.25㎜、そして1.25㎜のものは価格が6000円以上と高額になってしまいます。
ナチュラルガット
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1.36
|
ナイロンガット
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1.14
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ポリエステルガット
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1.38
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ガットの比重比較
しかし、その重さでラケットの先が少し重くなり、振り回しやすくなるので、重さが気にならなければパワーアップに繋がります
■飛び過ぎる
ここまで書いてくると、欠点はないのでは? と思われるかもしれませんが、実は最大の欠点となるのが、実はこの飛びの良さにあります。
要は、飛び過ぎです。
現代テニスはラケットが高反発になり、スイングも高速でボールを打ち合います。
そのことがナチュラルガットでは、オーバースペックになってしまったのです。
「過ぎたるは、なお及ばざるが如し」という言葉がありますが、まさにそうなってしまう訳です。
これがプロがナチュラルガットを単体で使わなくなった原因です。
その飛びを抑えるために、飛びを抑えられるポリエステルガットをラケットの横に使った、横ポリ(縦ナチュラル)と呼ばれるハイブリッドが、プロの間で多く使われるようになりました。
■張り手の技術が必要
また、ラケットにナチュラルガットを張るのは、熟練した技術が必要です。
実はナチュラルガットは結構硬く、猫のヒゲ(触ったことのある人には分かってもらえる?)のような感じなのです。
それに巻き癖がついているので、コイル状になっています。
これを「ハンドストレッチ」といって手で引っ張って伸ばし、少し癖を取ります。
と言っても、癖はかなり残っていますので、このクルクルと絡みつくガットを丁寧にほぐしながら張るので神経を使います。
ナチュラルガットは、非常にデリケートです。
横にガットを張るときに、レーシングと言って、縦ガットに編み込んでいきますが、この抵抗によってガットが傷んできます。
大きな負荷がかかるラケットの上側に、少しでも傷みの少ない所を持っていきたいので、横ガットはラケットの上側から張り下ろして丁寧に編み込んでいきます。
それを下から張ってしまうと、ガットが切れやすくなってしまいますので、しっかりした技術と知識を持つ張り手(ストリンガー)に、張ってもらわなければなりません。
代表的なナチュラルガット
ナチュラルガットと言えばBaborat TOUCH VSです。
サーモガットテクノロジーによりコーティング剤がにじみ出してくるために、いつもコーティングされた状態を保ちます。
世界のビッグトーナメントで勝ち続ける栄光のストリングです。
1.25㎜と1.30㎜と1.35㎜の三種類の太さがありますが、1.30㎜は飛びとホールド(球持ち)感のバランスが良いでしょう。
1.25mmは反発力が高いですが、切れやすいです。
1.35㎜は打球感がマイルドになり、耐久性も大きくなります。
[単張パッケージ品]バボラ(Babolat) TOUCH VS タッチ ブイエス (125/130/135) 硬式テニス ナチュラルガット 201031 (20y4m)[次回使えるクーポンプレゼント] 価格:6,100円 |
気軽に使えるナチュラルガットといえばBabolat TOUCH TONIC
ナチュラルガットの中では一番安く(4000円くらい)手に入ります。
厳密な太さはなく、1.35㎜よりも細いか太いかに分かれます。
1.35㎜よりも細いものと1.35㎜より太いものがあり、耐久性よりもボールの飛びを優先するのであれば細い<1.35を、耐久性を重視するのであれば太い1.35<を選びましょう。
バボラ BabolaT テニスガット 単張り タッチトニック(Touch Tonic) 130 ナチュラル 201032(130)「旧商品名:トニックプラス ボールフィール」 価格:4,290円 |
コーティングを極力少なくして、昔ながらのフィーリング(昔はコーティングがされていませんでした)にこだわったWilson NATURAL GUT
ウイルソン Wilson テニスガット 単張り ナチュラルガット(NATURAL GUT) 16 130 ナチュラル WRZ999800 価格:5,980円 |
ベルギーの牧場で餌にまでこだわった、オーガニック・グラス・フェド・カウから作られている超高級ガットです。
その特長は、歯切れの良さになります。
太さは1.25㎜と1.30㎜がありますが、耐久性に目をつむって、歯切れの良さをもとめるのであれば1.25㎜を、歯切れの良さと耐久性をバランス良く求めるならば1.30㎜を選びましょう。
まとめ
合成樹脂のシンセティックストリングは、ナチュラルガットの性能を追いかけて開発されていますが、まだまだその背中は遠いところにあります。
本当にすごいことですね。
そんな違いが分かる人間の感覚も、これもまたすごいと言えます。
140年の歴史の中で培われてきた、最高の打球感を味わうために、財布のひもを少しだけ緩めて、一度は張っていただきたいナチュラルガットです。
そして、違いが分かるテニスプレーヤーになりましょう。