硬式 テニス センターベルト(ネットストラップ)の通し方
硬式テニスでは、ネットストラップ (センターベルト)によってネットの真ん中を低くしています。
公営テニスコートを借りてプレーをするときに、金属のバックルで調整するタイプのストラップに苦戦することはありませんか?
ストラップの通し方がよくわからずに適当に通すと、使用している間にストラップがズレてネットの高さが変わってきたりします。正しいストラップの通し方を画像でご説明します。
硬式テニスではネットの真ん中をストラップで低くしている理由、ネットに関する歴史、今後のネットの高さについてもお伝えします。
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この記事の目次
ネットストラップ(センターベルト)の通し方
硬式テニスで使うネットは、真ん中が白いベルトによって押し下げられて、両端よりもセンターの方が低くなっています。
このネット中央に設けられたベルトを「ネットストラップ」と言います。
センターベルトと言う方が多いですが、正式にはネットストラップです。
このネットストラップ、軟式テニスの方も使われている公営のコートではネットストラップが外されていたり、間違った金具の通し方がされていることがあります。
とりあえずネットの高さが合っていればいいと適当に通されたものは、使っているうちに緩んできてしまうこともあります。
どのような手順で通したらよいか、詳しく説明していきます。
時計やズボンのベルトのように、上から下に通してしまうと、使っているうちにゆるんできてしまいます。
下の図のように、「Sの字」を描くように通すと、きっちりと止まります。
1→2→3の順番に「Sの字」を描くように通す
ネットストラップの通し方
1.まずベルトの端をバックルのギザギザしているところのもう一段下の隙間に、内から外に向かって通します。
2.次にバックルのギザギザしている隙間に外から内に向かってネットストラップを通します。
この時にネットの高さが91.4㎝になるように合わせてベルトを締めます。
金具のギザギザの隙間にベルトを上向きに通すことで、ベルトが引っ張られるほどギザギザに食い込んで緩まなくなります。
3.この状態でベルトはもう緩みませんが、余ったベルトが遊んでしまわないようにバックルの一番下へ収めておきます。
4.たるみを取れば、完成
ストラップ(ベルト)の種類
ストラップの種類は、バックル式、面ファスナー(マジックテープ)式などがあります。
マジックテープ式は、調整せずに使えるので、手軽に使えます。
公営テニスコートで、多く使われているのは金具式のタイプです。
画像 テイエヌネット株式会社
ストラップの幅は5cm以下で、色は「白」と決められています。
ネットストラップの通し方を説明してきましたが、ネットの高さはご存じでしょうか?
0.914m=1ヤードの高さと決まっています。
コードで吊ったネットをネットストラップで押し下げて、高さを調整します。
高さの調整は1人でやるよりも、複数人でやる方が楽にできます。
たるんでいるネットをベルトの調整をしてから、クランクを回してネットを張るのも他の人にしてもらえると、移動せずに済みます。
また、すでに固く張りあがった状態のネットを調整するときはネットを押し下げてもらうと、調整がやりやすいです。
1人で調整をしようとしている人がいたら、すかさずお手伝いをしてあげるようにしましょう。
ネットの高さやコートサイズについて知りたい方は、こちらをどうぞ
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硬式テニスネットはなぜ真ん中が低い?
軟式テニスのネットは、真っすぐであるのに、硬式テニスのネットは中央部分が低くなっているのはなぜでしょうか?
物理的な理由
昔テニスが始まった当時は物理的にネットを一直線に張る技術がなく、ネットの重量でどうしても中央がたるむので、仕方なく中央が下がったままでやっていました。
同じ条件で、プレーをするためにネットストラップで明確に高さを設定したようです。
その当時のネットの高さがルールになったため、ネットを一直線に張る技術ができた現在でもわざわざネットストラップで中央を下げているというのが一般に言われている理由です。
テニスの歴史
11世紀~12世紀にフランスの修道院で考え出された「ジュ・ド・ポーム」(jeu de paume)がテニスの原型と言われています。
初めは、素手や手袋をはめてボールを打っていましたが、しだいにラケットが使われるようになりました。王室、僧侶、貴族の間に流行しました。
1632年にパリで出版された中世のテニス解説書の口絵
出典 『The Annals of Tennis』(1878年刊)
下の画像は、現代のアメリカのサウスカロライナ州エイケンテニスクラブのジュ・ド・ポームのコートです。
画像 Eoghanacht
屋内で競技するジュ・ド・ポームのコートは、床とそれを囲む壁面、さらにその壁面に沿って設置される庇(ひさし)から構成されています。
ネットはピンと張らず、中央の部分が低くなるように、わざとゆるませています。
ジュ・ド・ポームは、ヨーロッパ各地で流行するようになり、ほかの類似の打球ゲームと区別するため、ポームを「リアルテニス」と呼ぶようになりましたが、ルールの統一がされておらず混乱が絶えませんでした。
1873年、英国のウォルター・ウィングフィールド少佐は発明されたばかりの芝生で弾むボールに着目して、「スファイリスティック(ギリシア語でプレーの意)またはローンテニス」と名づけた競技を考案しました。
ローンテニスは、コート、ルール、用具を整理統一しました。
当時のネットの高さは、センターで1.42mもあったそうです。
ウィングフィールド少佐は、このコートに合わせた三角形のネットと洋ナシ形のラケット4本、ゴムボールにルールブックを付けたものをセットにして「実用新案特許」を申請し、商品化したのです。
発売されたローンテニス・セットの解説書に図解されているゲームのイラスト
出典◎『WINGFIELD: Edwardian Gentleman』(1986年刊)
「ローンテニス」は、芝生の上ならどこでも楽しめる「持ち運びのできるテニス」などともいわれ、男女ともにでき、運動になるという点でこれまでのいかなるスポーツとも異なっていました。このゲームはまたたく間に人気になり、近代テニスの元祖となりました。
1874年には、より弾むボールが開発されました。
1877年には、アマチュアのオープン大会として「ウィンブルドン大会」が創設され、このときに、コートの広さや得点方法など、さまざまなルールが決められました。
以降毎年大会が開かれるようになり、この大会が現在の「ウィンブルドン選手権」へとなりました。
第1回ウインブルドン大会と伝えられている絵
出典◎『WIMBLEDON: the Official History of the Championships』(2001年刊)
第1回大会の出場選手は、男子22名で、みんな下からアンダーサーブを打っていたそうです。
その後、ネットポストの材質が木製から1880年代になって鋼鉄製となり、ネットを強く張ることができるようになりました。
1883年には、コートサイズ縦23. 77m×シングルス8. 23m、ダブルス10. 97m、ポール1. 07m、ネットストラップ0. 914m、サービスボックスの長さ6. 4m等々の現行サイズが決まりました。
それ以前は、ネットの高さはセンターで0.99m,両サイドは1.54mもあったそうです。
ネットの高さの変化は、ラリーの応酬のための適切な高さが求められたことも要因です。
ネットが低くなったことで、サーブも上から打つサーブへと変わっていきました。
1897年ウィンブルドン選手権 J. Parmley Paret
今後は、変化する?
この真ん中だけ低くなっているネットの高さは、今後も続いていくのでしょうか?
ラファエル・ナダル選手は、以前、用具の進化でスピードやパワーの方が技術や戦術より優位に立った場合、将来のテニス界は問題に直面することになると発言したことがあります。
ラファエル・ナダル選手
2016年マイアミ・オープンのシングルス初戦を前にした会見で
「テニスは全般的に、すべての側面から改善が必要になっている。今日の選手は今までよりも長身だ。ラケットも以前より強い球が打てる。その中で、ネットがどれくらいの高さであるとか、すべての面でルールが変わっていないというのも事実だ」
現代のテニスは、選手の技術の向上、フィジカルの向上、そしてラケットなど用具の向上によって、早い試合展開が主流となり、長身のビックサーバーが台頭していることもあいまって、1ポイントの展開が短くなりつつあります。
「僕らの世代のことではなくて、今後の世代についてだ。観客は劇的なことや、ラリーを好む。サーブが1本、ショットが1本だけのすごい試合というのは記憶にないからね」
「観客が一番記憶する試合は、信じられないポイントのある長時間の試合だ。1本のサーブや1本のショットだけに称賛が送られたり、感情が出たりすることはない」
ナダル選手の発言は、テニス人気が今後も続くように、ルール変更を求めたものです。
2017年に新しく開設された21歳以下の選手によるイタリア・ミラノで開催したツアー・ファイナルATPの大会では、「時短」をテーマにルールを変更されました。
1セットを4ゲーム先取とし、3オールで並んだ場合はタイブレークを行う新ルールを導入しました。
こうしたナダル選手のような意見が反映されて、近い将来ネットの高さが変わるかもしれませんね。
まとめ
硬式テニスのネットストラップの通し方について、なるべく細かくわかりやすくお伝えしました。
また、ネットストラップを使って低くしている理由や歴史、今後についてもふれてみました。
テニスという競技を面白くさせるのに、大きな影響のあるネットの高さ。
こちらの記事で、この高さの意味を考えてみるきっかけとしてみてください。