ガット(ストリング)種類別のテンションの落ち方は?ナイロンとポリ測ってみました!
ガット(ストリング)の張り替えは、一般的には「3カ月ごとに張り替えましょう」といわれています。
でも、それはどうしてなのか、その根拠とは?
ガット(ストリング)の種類別の張替えは、いつが正解なのか?
ラケットに張られたガットは実際には、どのように伸びていき、伸びきってしまうのは、どのくらいの時間(日数)なのか?
多くの方が、ナイロンガットかポリエステルガットを使っていると思います。
ナイロンガット、ポリエステルガットは、どのくらいの期間、性能を発揮するのかを紹介します。
それを検証するために、ナイロンガット、ポリエステルガットのラケットの面圧の変化を3カ月間計測してみました。
ナイロンを張っている方、ポリを張っている方、ガット張替えタイミングの参考にしてください。
この記事の目次
ナイロンとポリエステルガットを測ってみた
テンションと面圧というものがある
ガット(ストリング)を張ってもらうときには、ショップやテニススクールなどで「何ポンドで張ってください!」と依頼されていることと思います。
面圧というのは・・・
「テンション」と「面圧」の違い
今回の計測で使用したGOSENのテニスコンピューターERT300によると
面圧(ダイナミックテンション)とは(ERT300の取り扱い説明書より)
※DT(ダイナミックテンション)とは面圧のことを言います。 DT値は、スイートスポットにおいてガット面を1センチたわませるのに必要な力を指します。 単位:kp/cmまたはNewton/mm「DT値」 |
ERT300の説明は、のちほど致します。
計測結果は?
★ナイロンストリングの使用者
週3程度のテニス頻度のフラットドライブ系で、そこそこのハードヒッターの男性。
★ポリエステルストリングの使用者
週4程度のテニス頻度、フラット系でパワーは一般的なスイングスピードより少し速い感じの男性。
ナイロンストリングとポリエステルストリングの面圧の推移をグラフにしました。
ナイロンストリングは、徐々に落ちて行き、ポリエステルストリングは、張ってすぐに急激に落ちました。
ポリエステルストリングは、その後2週間で伸び切ってしまうようです。
ポリエステルストリングは、張ってから2週間をすぎると打感が悪くなりますが、データがそれを証明しています。
ナイロンストリングの寿命は、3カ月と言われていますが、実際のその旬は1ヶ月ほどのようです。
どちらのガットも、ある一定のテンション相当まで伸びたらそれ以上はほぼ変化しない状態になっています。無制限に、どんどん伸びていくというわけではありません。
この実験に使ったラケットのフェイス面積は、98平方インチです。
ラケットの紹介は、後ほど掲載します。
今回の計測に使ったラケットは、同じストリンガーによって張られたものです。
ガット張りの技術にもより(ガットの1本1本にテンションムラがあると落ち方が激しい)、その落ち方が変わってきます。
GOSEN テニスコンピューターERT300
画像 GOSEN
そのDT値を換算用ディスクでテンションに変換すると、
DT38=55lbs(ポンド)
DT37=53lbs(ポンド)
DT36=52lbs(ポンド)
DT35=51lbs(ポンド)
DT34=49lbs(ポンド)
DT33=48lbs(ポンド)
DT32=47lbs(ポンド)
になります。
☆もっと上手くなりたい、もっと試合に勝ちたいと思っているならば
張替えなければいけない理由
テニスラケットは、フレームとガットから構成されていますが、フレームとガット共にボールを飛ばす力があります。
ガットがたわんで戻る動きをトランポリン効果といいますが、ラケットがボールを打ったときでいうと、ボールが人で、ガットがトランポリンの役目をします。
トランポリン効果 ガットがたわんで戻る動き
このトランポリンが弾まなかったら、人間は高く飛べません。
ラケットもこれと同じです。
フレームにも反発力がありますので、それでボールは弾みますが、ガットの弾力がないのはもったいないですよね。
このガットのトランポリン効果がなくなったところが、張替えの目安になるのです。
張替え時期はいつがいい?
テニスの学校おススメ時期
この検証の結果、望ましい張り替え時期は、ナイロンガットは1ヶ月ごとに、ポリエステルガットは2週間ごとに張り替えとなりました。
テニスを真剣にされるのであれば、この期間での張り替えをしましょう。
しかしこの張り替え期間では、ガットの張り替え代が大変ですので、ナイロンガットは2ヶ月、ポリエステルガットは1ヶ月での張り替えを推奨いたします。
ガットに、トランポリン効果があるように心がけましょう。
ガットに、トランポリンがいなくなると、そのぶんフレームがたくさん仕事をしなくてはいけません。
ラケットに仕事をさせるのは皆さんです。
飛ばないラケットに、無理やり仕事をさせるのは骨が折れると思いませんか?
ちなみに、テニスコンピューターERT300のマニュアルには…
DT値が10%、最大で20%落ちた場合は張替えをおススメします
とあります。
DT38の10%ダウンはDT34
DT36の10%ダウンはDT32
プロの場合は
多くのプロがポリエステルストリングを使っていますが、一部のトッププロは、ボールチェンジごとにラケットを交換するのを見かけますが、ウッドラケットでナチュラルガットが全盛のころは、このようなことはほとんどありませんでした。
(ボールチェンジのタイミングは、多くの大会で最初7ゲームで、その後は9ゲーム)
それは、ポリエステルガットの、この急激な面圧低下に起因しているものと思われます。
あるプロは、張り上がり時間を試合開始7時間以内に指定したり、またあるプロは、張り上げから一晩経ったものを指定してきたりするそうです。
前者は張りたての新鮮さを大事にし、後者は面圧を落ち着かせて、安定性を重視しているわけですね。
プロのストリングへのこだわりには、ものすごいものがあります。
計測に使った機器
テニスコンピューターERT300
計測に使ったのは、GOSENのテニスコンピューターERT300。
今回、面圧を計測した機器
ERT300はダイナミックテンション(DT)を計測する機器です。
ERT300が振動してそれを電気的に計測して、DT値を計算します。
DTは、ガット張り上げ面の硬さを示します。
DT値は打球時にスイートスポットのガットの面を1cmたわませるのに必要な力を示す値です。
その単位はキロポンド/cmまたはニュートン/mmで表わします。
ERT300には、読み替え表も一緒に付属しています。
その読み替え表の中から測定しているラケットのヘッドサイズを選び、値を確認するというものです。
プロも使用!
プロの中には、このERT300を持ち運んでいるプレーヤーがいます。
これは、ストリンガー(張り手)やストリングマシン(張る機械)が違うと、同じテンションでガット張りを依頼してもDT(ダイナミックテンション)が違ってくるからです。
例えば、前の大会でAストリンガーに、50lbs(ポンド)で張りに出して、その張り上りのDTが36だったとして、次の大会でBストリンガーに、同じ50lbsで張ってもらったらDTが35だったから、52lbsで張りの依頼をしてみようとなるわけです。
実際の計測に使ったラケットとガット(ストリング)はこちら
ラケット:Volkl Organix9 SuperG(98平方インチ、ストリングは縦18本×横20本)
ストリング:バボラ SG Spiral Tek 130(ナイロンモノフィラメントストリング)
テンション:44lbs(ポンド)
張った直後:38 kp/cm
12週間後:35 kp/cm
ラケット:Volkl Organix10 325g(98平方インチ、ストリングは縦16本×横19本)
ストリング:シグナムプロ Plasma Pure 123
テンション:48lbs(ポンド)
張った直後:36 kp/cm
12週間後:32 kp/cm
まとめ
今回、実際に計測してみて、こんなに早くテンションが低下するものなのだと改めて確認しました。
プロの世界では1度使ったガットは、全て張り替えますが、それは無理だとしてもこまめな張替えが必要なガットです。
日本のストリンガー(ガットを張る職人)の世界では、張ったばかりのガットのことを「刺身」などといいます。
それほどではないにしても、ガットの賞味期限内には張替えをしたいものです。