テニスラケットと同じくらい大切なストリング! テニスギア対談④【動画有】
「テニスの学校」とテニスマニア中居さんとのテニスギア対談第4弾は、ストリング(ガット)についてです。
ラケットを選んだ後は、ストリング選びです。同じラケットでも、ストリングによって打った感じが相当変わってきます。
自分のテニススタイルに一番マッチするストリングを選ぶのはなかなか難しいものです。というのも、ストリングには様々な種類があることと、素材、太さ、張りの強弱を変えることで打球感が異なってくるからです。
この記事では、ストリングの種類、特徴、最近の流行など、あなたのストリング選びに役立つような情報をお伝えします。
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この記事の目次
ストリングの素材、種類
中居 晃(なかい あきら)さん
大手スポーツ専門店に勤続33年
その間に発売されたラケットはほぼ全て試打し、体にいいもの、テニスが上手くなるグッズを日々探されています。テニスマニアなら押さえておきたい情報満載の「マニアック通信」を2017年まで16年続ける。
河合 幸治 (かわい こうじ)
埼玉のテニススクール「テニススタジオ川口」校長&テニスwebレッスン「テニスライズ」代表
元全日本ランカーで、数々の公式戦に優勝してきた経験から、テニス上達のコツをわかりやすく伝えることに日々燃えています。
テニスラケットは近年カーボン繊維の進化によって軽量になったことでスイングスピードが高速化し、反発力自体も向上してきました。
そうしたラケットの進化によって、これまでのストリングとは異なった性能も求められるようになってきました。ストリングの種類も増えて、構造上の進歩もしています。
自分のプレーに合ったストリングを選ぶためには、どのような材質のものがあるのかを知ることから始めましょう。
テニスラケットのフェース部分に張ってある糸を一般的には「ガット」と呼ぶことが多いですが、「ストリング」とも呼びます。
ストリングを張る作業については「ガット張り」ということがほとんどですので、多少ややこしいかもしれません。
辞書で調べると「ガットgut」は、羊・豚などの腸から作った細い紐・糸。「ストリング String」糸。弦楽器の弦。となっています。
「ガット」は、その名前の由来から動物の腸を素材とした「ナチュラルガット」を指し、「ストリング」は化学繊維素材の「シンセティックストリング」を含めた全体を指します。
皆さんが使っている素材は化学繊維のものが多いと思いますので、この記事ではストリングの名前を使って説明していきます。
ストリングの素材
ストリングには、素材により主に、ナチュラル、ナイロン、ポリエステルの3つの種類があります。
◆ナチュラルガット
以前は羊を用いていたようですが、現在は牛の腸から作られています。
価格的に他のストリングよりも高価で、切れやすいのが難点です。
打感としてはシャープな反発性がありながら、マイルドな「ボールが乗る」感覚も持てるのが他のストリングにはない特徴です。
◆ナイロン
ポリアミド系繊維の通称としてナイロンという名前が定着しています。
多くの方が使っている素材で、種類が大変豊富です。スピン系、反発系、ホールド感重視のものなどがあります。
他のストリングより安価ですが、比較的切れやすいです。
◆ポリエステル
最大の特徴はストリングの硬さです。そのため切れにくいのですが、すぐに伸びてしまいます。
スピン、コントロール性能が高い。
最近使う人が増えてきています。特にプロは、ハイブリッドの使用も含めて多くの人が使っています。
◆ハイブリッド
最近流行しているのが、縦糸と横糸で異なった素材を張る「ハイブリッド」です。ナチュラルとポリエステルの組み合わせが多く選ばれています。
ストリングの種類
それぞれのプレーヤーに合ったストリングは?
どのストリングが良いかは、プレースタイルや使っているラケットにもよります。
最近は反発系で飛びが良い、スピードの出るラケットが増えてきたので、ストリングについてもこれまでは使い勝手の良かったものでも、ラケットが代わるとそのままで良いとも限りません。
自分のプレースタイルや、ストリングの種類による特徴を踏まえて、自分に合ったストリングを探してみましょう。
ナイロン モノフィラメント 弾きの良くてスピードが出るモノフィラメントは、ラケットもストリングも弾いてしまってコントロールがしづらいので少なくなってきています。 低価格で最初に張る人も多いGOSENミクロスーパーは、10年以上ストリングの定番でした。 |
ナイロン マルチフィラメント マルチフィラメントは、弾きの良いラケットに食いつきの良いストリングを使用することで、弾きの良さを落としてコントロールに変えます。 細い繊維をねじり合わせていて、一本一本の繊維が非常に細いので切れやすい性質があります。 |
ポリエステル 最近スピンを掛けて打つ方が多くなったため、耐久性が良くて飛びを抑えられ、スピンが掛かりやすいポリエステルが増えてきています。 良いところばかりのようですが欠点があります。 高速でスイングするとこのストリングの性能が出るのですが、ゆっくり振ると「ただの硬いストリング」に豹変してしまいます。そして、ボレーやスライスなどの柔らかいタッチは少し出しづらいです。 |
“中居さんのとっておき情報!!①” ポリエステルのテンション下がる↓理由は… ポリエステルは大体1か月位でテンションが大きく下がりますので、切れなくても張り直さなければならなくなります。ナイロンと違って、見た目がボソボソしてこなくても最初の打感とは全く変わってきてしまいます。 なぜ、テンションが落ちてしまうのか最近解明されてきました。 ポリエステルという繊維はこすれることで熱がかなり発生して、その熱で温まって伸びてしまいテンションが落ちてしまうのです。 |
一石三鳥!?「ハイブリッド」張りが流行
これが流行のワケ
フェデラー選手や錦織圭選手などプロの世界では、ストリングの縦か横にポリエステルを使ったハイブリット張りが多くなっています。
一般プレーヤーの方にもだいぶ浸透してきています。
ポリエステルの緩みやすいという欠点を防ぐために生まれたのが「ハイブリッド」張りです。
縦糸をポリエステル、横糸をナチュラルで張ると…緩まなくなります。
これは、縦のポリエステルの出す熱を横のナチュラルガットが吸収してくれることでテンションの維持が良くなるからです。
さらに、ポリエステルでは硬さにより柔らかいタッチが出にくかったのが、ナチュラルガットの特徴であるホールド感によってボレーのタッチが良くなります。
ストリングが切れるのは大体縦糸が多いのですが、縦糸をポリエステルにしておくことで縦糸が切れにくくなって長く使える上に、横糸のナチュラルガットの特徴も生かせます。
また、高価なナチュラルガットと安価なポリエステルを半分ずつ張ることで、ナチュラルガットを全部張るよりも安く張ることができます。
ハイブリッドによる1石三鳥なところ♪ ★緩まない、テンション維持が良くなる ★柔らかいタッチも出せるようになる ★ナチュラル単体を張るよりリーズナブル |
縦横、どう張る?ハイブリッドの張り方
ハイブリッドというと元々は縦にポリエステル、横にナチュラルだったのですが、フェデラー選手が縦にナチュラル、横にポリエステルを張った、『フェデラーハイブリッド』を出して以降、縦にナチュラルを張るプロも増えてきています。
錦織圭選手も、2015年までは「縦ポリ、横ナチュラル」でしたが、2016年の全豪オープンより「縦ナチュラル、横ポリ」にしています。
ボールを打った時の打感は、7割が縦糸の影響を受けると言われています。ハイブリッドに張った場合も、縦糸に選んだストリングの影響が強くなりますので、縦糸に自分のプレースタイルに合ったものを選ぶようにしましょう。
それぞれの特徴としては、次のようになります。
【縦ポリ×横ナチュラル】 ガットが切れるのは9割位、縦になると思います。 縦にポリエステルを使っているためにスピンが掛かりやすく、縦が切れにくいために長く使える上に、横のナチュラルガットのホールド感を生かすことができます。 |
【縦ナチュラル×横ポリ】 最近、こちらの張り方が流行っています。縦にナチュラルガットを持ってきた方がナチュラルガットのフィーリングの良さがより打っている人に伝わります。 糸が動いて戻るという「スナップバック」現象で、横のポリがつるつるしていて縦糸のナチュラルガットが滑って戻りやすくなって、スピンの掛かりが大変よくなります。 |
どうやってストリングを買えばいい?
ストリングの半分量ずつを使って、ハイブリッド張りになるのはわかっても、何を縦、何を横にするかといった選択が何パターンもあるので、どのようにして、ストリングを購入したら良いか困ってしまいます。
基本的には、次の購入方法となります。
①あらかじめ、ハイブリットガットとして用意されている組み合わせの商品を購入する。(メーカーから出されている種類はまだ少ない)
バボラ BabolaT テニスガット 単張り RPMブラスト+タッチVS(RPM BLAST VS) 125+130 ブラック 281037 価格:3,100円 |
②単張りで販売している2つのストリングを購入して、半分ずつ使って張る。
(張替2回分購入ということ)
☆テニスが上手くなりたいあなたにおすすめ↓
テンションの値は、どうやって決める?
同じラケットでも、ストリングの種類だけではなく、硬く張るのか、緩く張るのかのテンション(張力)の強さによっても打ち心地がまるで変ってきます。
どの強さで張るべきか、悩んでいる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
これまでご紹介したように、ストリングの素材によってもテンションの感覚が変わってきますし、ラケット本体の素材が変わることで同じストリングを同じテンションで張ったとしても打感が変わってきます。ラケット、ストリングの全体のバランスを考えて、自分の適正なテンションを色々と試していくようにしましょう。
テンションの硬さは、「ポンド lbs」で表します。
錦織圭選手は、2015年は58~60lbs、2016年全豪オープンで48lbs、全仏オープンで40lbsとテンションを下げています。
適正テンションとは、何か?錦織選手のように、強いテンションと緩いテンションではどう違うのかを説明していきます。
ストリングを引っ張る力がテンションです。
適正テンションとは
ラケットのフレームには、「適正テンション」が表示されています。
しかし、この値がちょうどいい打感の数値という訳ではないのです。
“中居さんのとっておき‘情報!!②” 例えば、50~60という表示の場合 ・上限の60以上で張るとラケットが壊れてしまいます!という意味です。 ・適正テンションの真ん中、55で張ってもまだ硬いです。
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大体、今はラケットの適正テンションにある一番下の数値で張るのが良いと思います。
張れる上限は決まっていますが、下はいくら低い値でも張ることが可能です。
硬い、柔らかいでどう違う?
◆緩い場合
緩いとトランポリン効果でストリングが大きくたわんでボールが飛びます。
スピードはあまり出なくて飛距離が出ます。前出の錦織選手の例のように、マイケル・チャンコーチに浅いボールのショットが多いと指摘されて、常に深いボールを打てるようにとの意図でテンションを大きく下げたというのがいい例です。
◆硬い場合
硬い場合はトランポリン効果が利用できないので飛ばなくなります。壁に当たって弾くだけになるので、自分の力で飛ばさなくてはいけなくなります。
逆に飛ばなくなる安心感からガンガン打てる、振り切れるというメリットもあります。
ただし、あまり硬く張り過ぎると衝撃の強さからケガにつながる怖れがあります。アマチュアで強く張り過ぎの方は気になります。
ゲージの太さ 太い、細いの違いは?
ストリングのゲージ(太さ)によっても打感や飛びが変わってきます。
同じゲージでも素材によって打った感触が違ったものとなります。
通常は、ストリング断面の直径をミリ単位で表現して「1.25」のような数値で表しています。
一般的には、1.20mm以下のガットは細ガット、1.20~1.30mmは普通、1.30mm以上が太ガットとなります。
◆細いとどうなる?
・細いゲージは歯切れがよくシャープに弾きますので、サーブとボレーを生かすテニスに向いています。
・非力な方には、ボールが飛ぶので苦しい時に返せるようになります。
細い分ストリングが切れやすくなるのですが、力のない女性の場合はそんなにストリングを切らないでしょうからおすすめできます。
・ナイロンで細いものは切れやすいのですが、細めのポリエステルの1.1mmや1.2mmを張るのならば、ポリエステルの弾かないという欠点をカバーできるというメリットもあります。
◆太いとどうなる?
・太いゲージは、少し飛びが抑えられます。ストロークが得意な方は1.3mm以上の少し太めのゲージが合います。
・打感が少しまったりしてきます。柔らかく感じるので、同じテンションでも乗せているような感じがします。
・テンションを硬く張って、ボールを潰しているような方はボールをぐしゃっと潰しやすくなります。
まとめ
ストリングには色々な材質や太さがあって、様々な打球感があり、同じストリングでもテンションによって全く違う特性となります。
さらには「ハイブリッド」張りとなると、選んだストリングの組み合わせによっても違った打感になるなど、本当に自分に合ったものを探すのは「深イイ」探求心が必要なようです。
自分のプレーならこのストリングが合いそうと考えることで、自分を客観的に捉えることができるキッカケとなるかもしれません。
また、自己分析をしっかりできている方ならば、より自分のプレーを生かせるストリングを選ぶことで一段とプレー向上につながるはずです。
この記事をベストなストリング選びの参考にしてください。