テニス選手がやっているルーティンワークでメンタル強化!【動画有】
試合で緊張して力が入り上手く打てないという方に、ルーティンワークを取り入れたメンタル強化のコツを紹介します。
プロのスポーツ選手を見ていると、練習や試合の時に毎回決まって行うその人それぞれのアクション、いわゆる「ルーティン」を持っています。
ルーティンをする目的はそれぞれの選手によって違うと思いますが、ルーティンはスポーツ選手が精神や肉体を管理するために非常に重要なものです。
どのような効果があって、身につけるためにはどうしたら良いかを解説します。
この記事の目次
一流スポーツ選手はルーティンワークで集中している
一流スポーツ選手達は、試合中の大事な場面で決まった一連の動作をしてみせます。まるで儀式みたいな動きですが、スポーツ心理学用語ではこれを「ルーティンワーク」もしくは、単純にルーティン(routine)と言っています。
野球のイチロー選手は、ネクストバッターズサークルからバッターボックスに入るまでに、15種類以上の決まった動きを経てバッターボックスに向かっているそうです。
バッターボックスに入った後、打席に立ってから袖を引っ張りながらバットを持った腕を肩と平行に上げるしぐさをしています。
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また、ラグビーの五郎丸選手がキック前にする両手を合わせて人差し指を立てて祈っているようなポーズは、皆が真似をする位流行しました。
本来、ルーティンワークというのはポーズではなく一連の動作なのですが、あのポーズそのものが集中の秘訣というように誤解されて広まってしまいました。
画像 matomame.jp
テニス選手でいえば、ラファエル・ナダル選手のルーティンの多さは有名ですね。
試合開始時のコイントスの間は左右に飛び跳ね、トスが終わるとコート後方までダッシュの動きをしています。ショットを打つ前にはパンツを直し、鼻や耳、髪を触ると動作を毎回繰り返しています。
ナダル選手のルーティンをまとめた動画
あの選手は、いつも同じ動きをしているなと誰もがイメージしてしまう位、決まった動きをなぜしているのでしょうか?
スポーツ心理学の研究では、ルーティンのある選手の方がない選手に比べ成功体験が多いことが明らかにされています。
ルーティンの効果ややり方について、説明していきます。
ルーティンワークとは?
スポーツ選手がなぜ「ルーティンワーク」をやるのかというと、それは「メンタル面」「集中力」に対して効果があるからだと言われてます。
スポーツでのメンタル面の重要性は、皆さんもご承知のことと思いますが、どれだけ練習しても試合で実力の半分も出せなかったということは少なくありません。
大きな大会や勝ちたい思いが強い試合になるほど、大事な場面でのプレッシャーが増し、心身の緊張が高まってしまうことは皆さんも経験されていることでしょう。
もっと強い気持ちを持つことも必要なことかもしれませんが、心の準備を整えることも重要です。
緊張した場面で、自分のいつもやっている簡単な動作をすることで、パフォーマンスを上げることができるとしたらやってみたくありませんか?
「ルーティンワーク」は、望ましい動作ができるために行う一連の準備動作の習慣や行動のことです。 |
ルーティンワークの基本的な理論として「条件付け理論」というものがあります。
ある刺激を受けることによって、反射・反応が自動的に引き起こされるようにすることです。
『パブロフの犬』の実験で有名ですが、餌をやる前に必ずメトロノームを鳴らすということを続けた結果、犬はメトロノームの音を聞くだけでまだ餌をみない段階でもヨダレが垂れてくるようになったという実験です。
画像 丸山カイロプラティック
つまり、ルーティン動作をやっておけば大丈夫という意識を持つということで『パブロフの犬』のようにひとつの自動メカニズムが脳に形成され、集中できるようになるのです。
イチロー選手は、打席に入る前、入った後に行うルーティンワークは毎回、同じ動作であるだけでなく、同じテンポやリズムだそうです。
さらに、イチロー選手は起床から就寝までほぼ同じ行動パターンで、食事内容も同じものを長期間食べ続けるなど驚異的なルーティンを行っていることで有名です。
イチロー選手は起床から就寝までほぼ同じ行動パターン
「イチローは同じ行動を繰り返すことによってメンタルを安定させているそうです。『心と身体は同調している』とよく言っていて、気持ちが安定してくると身体の状態も安定してきて、自分の状態の変化に対してより敏感になるという趣旨のことも話していました。野球には不確定要素が必ず生じるので、できるだけ自分でコントロールできるものを周りに増やしていきたいのです」メジャー関係者談 |
試合中のルーティンに限らず、朝起きてから夜寝るまで、スポーツ選手は数多くのルーティンを持って生活しています。
イチロー選手のようにたくさんのルーティンがあれば、毎日の生活の中で自分の変化に気づきやすくなりやすいのですね。
女子ダブルスで世界ランク1位となった杉山愛さんも、1日の中でテニスのために行うルーティンが、33個あったそうです。
テニスを仕事としているわけではない皆さんが日常生活でルーティンも取り入れるのは難しいと思いますので、テニスの試合や練習の時に役立つ「プレ・パフォーマンス・ルーティン」を紹介します。
試合でパフォーマンスが下がる理由
「プレ・パフォーマンス・ルーティン」を紹介する前に、なぜ競技中にパフォーマンスが低下するかについてはいくつかの理論があります。こちらを先に紹介します。
■処理資源不足理論
自分の意識には容量があるため、試合のときは練習と違って色々なことに意識を少しずつ取られてしまい、肝心のプレーに向ける意識の量が減ってしまい、結果的にパフォーマンスが落ちるという理論です。
頭の状態を読書で表現すると…
☆練習の時は「いいプレーをする」という本が一冊だけ。なので集中して読むことができる。
練習時は、一冊だけに集中
☆試合の時は、何冊も本が広げられた状態。「いいプレーをする」という本を読み進められなくなってしまう。
試合の時は、脳内に何冊も広がってしまう
■過剰な意識的制御理論
試合中の緊張や不安から「失敗できない、慎重にならなければ」と思うと、ふだんは無意識でしていた動きに過剰な意識が向いてしまい、意識すればするほど動きがぎこちなく、危なっかしくなってしまうという理論です。
意識すればするほど、うまく動けない
もっと上手くなりたい、もっと試合に勝ちたいと思っているならば |
ルーティンの効果
パフォーマンスが低下する2つのパターンを先ほど紹介しました。
・プレー以外のことに気を取られてしまう
・プレーを過剰に意識してしまう
こうしたパフォーマンス低下に対して、プレー直前に一連の動作を行うことで、プレーに意識を集中しておくことができるようになります。
パフォーマンスの前に行う「一連の考え」や「動作」を「プレ・パフォーマンス・ルーティン」といいいますが、ラクビーの五郎丸選手のプレ・パフォーマンス・ルーティーンを指導したのは、スポーツメンタルトレーナーの荒木香織さんです。
荒木さんによると、
基本的に「プレ・パフォーマンス・ルーティン」は、2つの条件のもとに行うもの 1.止まっているボールへアプローチすること 2.制限時間がなく自分で時間をコントロールできること |
効果として大きく4つをあげています。
1.何度も動作を練習することにより、それに続くプレー(五郎丸選手の場合はキック)をスムーズに行うことができる。 2.動作に集中することにより外的(歓声・相手の動き)及び内的(不安・心配)な障害を取り除くことができる。 3.動作を行うことによりストレスの軽減につながる。 4.動作を通じて、それに続くプレーのリハーサルをするため、プレーの修正をすることができる。(キックをミスしたら、次のキックの成功のため動作の途中で調整をする)。 |
文章 荒木香織さんのブログ「スポーツ心理学deメンタルトレーニング」
テニスの場合、荒木さんの言うボールが止まっている時となるとサーブやリターンで待っている時ということになりますね。
テニスのプレーで、「プレ・パフォーマンス・ルーティン」を取り入れている選手や、自分が取り入れる方法について説明していきます。
テニスに「ルーティン」を取り入れる
ジョコビッチ選手のルーティン
ノバク・ジョコビッチ選手は、他の選手のモノマネが上手く、以前「HEAD」ラケットのCMでマリア・シャラポワ選手のストロークやサーブのマネをしていましたね。
世界№1の期間が長く続いていたジョコビッチ選手は、№1になる前はサーブが不安定でダブルフォルトが多く、その頃はサーブ前に行う球突きの回数がとても長く有名でした。
30回以上も突いていた時も多く、大事な場面となるとより長く突いてしまい審判から警告を受けたこともありました。
№1になってからは、大事なポイントでも球突きの回数を変えずにペースを整えてサーブに入ってサーブが安定したので、サーブの入り方のルーティンをつかんだようです。
photo credit: isafmt DSCN0799 via photopin (license)
プレショット・ルーティン
テニスで、「プレ・パフォーマンス・ルーティン」を取り入れるとすると、ショットを打つ前の動作ですので、「プレショット・ルーティン」という言い方をします。
<サーブの場合>
サーブを打つ前に、「ダブルフォルトをしてしまいそう…」だとか「さっきは打ち込まれてしまった…」など余計なことを考えているとミスする確率は上がってしまいます。
余計なことを考えずに、ルーティンに集中することでサーブの確率は高くなることが期待できます。
プレショット・ルーティンの意義 ①入らなかったら、どうしようと思う余地を与えない ②ルーティンのパフォーマンスに集中することだけを考えることができる |
サーブを打つ前にボールを一定の回数、地面に突く動作を行う選手が多いのですが、ボールを突くリズムも含めて動作が一定の選手は、サーブが安定しているようです。
一定の動作をすることをすることでサーブが安定
これまではあなたもボールを2,3回突く動作をやっていたかもしれません。でも、何となくただやっていただけではありませんか?
球突きの回数だけでなく、構えてからボールを突いてサーブを打つまでの秒数までを一定とすることで、サーブの動作をスムーズにできます。
サーブのスイングをしてからのボールを持つ手の動き、ラケットの形も一定となるように意識してみましょう。
こちらの動画は、色々な選手のサーブのリズムの取り方が比較されたものです
これを参考にして、自分に合ったタイミングを見つけてください。
ただし、テニスでは20秒以内にサーブを打つというルールがあります。あまり長い時間のかかるルーティンではなく、短時間でできるルーティンを作るようにしましょう。
こんなに楽にサーブって打てるんだ!サーブを身につけるには…>>> 少ない時間でも上達するテニスの磨き方はこちら
<リターンの場合>
サーブのリターンを待っている間、手の中でラケットをくるくる回している選手をよく見かけます。
手首の緊張を取るためにも役立つ動きです。
サーブのリターンを受ける前のスプリットステップも、リターンの前の一定の動作です。
リターン時のスプリットステップには、選手それぞれのパターンがあります。
錦織圭選手は、左足を前にして右足を後ろに引いた構えて、グリップをフォア側に持っています。そこから踏み込んでいって、ショットを打っていっています。
錦織選手のフォアハンドリターン動画です
錦織選手のバックハンドリターン動画です
皆さんがリターンを行う時には、錦織選手のようにどちらかの足を軸に、最初の構えを作ってもいいですし、両足を広げて構える方法もあります。
グリップの構えも、フォア側でなくともバック側でもどちらでも構いません。
リターンをする前の最初の動作を決めて、その後のステップの動きも同じスタイルにすることで、リターンのルーティンとなります。
<ストロークの場合>
ラリー中は、そこまで意識することは難しいでしょうが、必ず相手が打つ時にステップをすることがプレショットルーティンになります。
相手が打つ前に必ずステップ
そのようにショットをふだん通りに打つために、スイングの前にいつも同じ動作を行うようにしてみてください
もし調子が悪くなって、ショットが入らなくなった時に、スイングを気にしすぎてしまうのではなく、いつものプレショットルーティンができているかをチェックしてみてください。
自分の中で、いつも通りの動作を繰り返すことによって緊張から解放されて、そこに意識ができれば良いショットが打てるようになってくるはずです。
ルーティンを身につけるには
再び、スポーツメンタルトレーナーの荒木香織さんによると
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文章 荒木香織さんのブログ「スポーツ心理学deメンタルトレーニング」
4.の次にくるパフォーマンスに沿ったルーティンというのは、
こちらも、荒木さんの言葉からで
ルーティンはそれぞれのスキル(例えば、スクラム、ボールキャッチ、キック、ランニングドリル)により変化させることが必要です。
テニスで言えばサーブとリターンでは違うルーティンをしましょうということです。
そして、ルーティンはサーブやリターンでの成功とは別に考えるべきものです。
こちらも荒木さんの言葉からで
最後にキックが成功したか否かといった結果と照らし合わせることはしません。あくまでも、プレ・パフォーマンス・ルーティンとして決めた動作を遂行することができたかどうかを評価しながら完成を目指します。
ルーティンが効果を発揮するためには、ルーティンの実行そのものに意識を向けることです。
テニスのプレーを自動化して体にしみこませるように、ルーティンの動きそのものを覚えてしまうと、他のことを考えながらでもできるようになってしまいます。
といっても、ルーティンの動きそのものは自分の習慣にできるようにしていく必要があります。
新しいことを自分の習慣となるまでの日数については、「習慣化21日間説」「66日間説」など色々あります。
その通りの日数でできるかは人にもよると思いますので、自分のためのルーティンを見つけて、身につけるために一か月は努力してみてください。
試合の時の緊張感に悩んでいる方は、こちらをどうぞ
まとめ
プレショット・ルーティンは、こうしなさい、という決まりはありません。
あなたがやりやすい一連の動作をあなたが見つけ、それをショットの前にやり続けて習慣とさせることだけが大事なのです。
誰もがルーティンを作れば上手くいくというものではありませんが、メンタル面の一つのスキルとして紹介しました。
自分に合ったものを試行錯誤しながら見つけていきましょう。
試合でも実力を出しきって、良い結果を出してくださいね。
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