テニス ライジングショットの打ち方【動画有】
テニスのライジングショットの打ち方、メリット、デメリット、使い方を紹介します。
バウンドした直後のボールを捕らえて打つ「ライジングショット」は、伊達公子さんが得意としたショットです。
伊達さんは、少ないパワーでもライジングで打つことで、相手の時間を奪って外国人選手の力強いショットに対抗することができました。
ライジングショットは、相手の力を利用してタイミングを早めて打つショットで、攻撃的に使えますし、深いボールを下がらずに打てる守備的なときもにも使えるショットです。
ライジングショットを身につけて、あなたのテニスをレベルアップしていきましょう。
この記事の目次
ライジングショットとは?
はじめに、「ライジングショット」とはどのようなショットなのか?について説明します。
ライジングは、rising=登る、上がるなどの意味です。
テニスでは、バウンドしたボールを上がってきている位置で打つことを指します。
ライジングショットと通常の打点
相手から山なりに飛んできたボールは、コートにバウンドしてまた山なりに上がって再びコートに落ちていきます。
通常のストロークは、ボールの放物線の頂点から落下したところを打点にします。
つまり、ボールがバウンドしたあと頂点まで上がってから、落ちてきている「自分の打ちやすい打点」で打っているのが通常と言えます。
ライジングショットの場合は、頂点、もしくは頂点に達する前を打点とします。
下の図で、打点を比較しています。
青:ライジングショット、 赤:頂点、緑:通常の打点
ライジングショットの3つの打点
ライジングショットで打つストロークの打点の高さは、以下のような3つのゾーンに分けられます。
1.膝から下の高さ(ショートバウンド)
2.お腹~胸(バウンドの頂点、もしくは頂点に達する前)
3.膝~腰の高さ
一般プレイヤーがライジングショットを打つときには、打ちやすい高さでボールを捕らえることで楽にボールを飛ばすことができるようになります。
1.膝から下の高さ(ショートバウンド)
膝から下の高さを打つことを「ショートバウンド」と言います。
ボール自体の力が最も強いところです。
ハーフボレーのように、タイミングとしては「パ・パーン」とバウンドしたところに合わせていくので、合わせやすい 🙂 です。
ただ打点が低いので、楽には返すことができますが、強くは打てない 🙁 というデメリットがあります。
膝から下の高さで打つ ①の高さ
2.お腹~胸(バウンドの頂点、もしくは頂点に達する前)
頂点の手前のスピードがなくなり始めたところは、一番打ちやすい 🙂 ゾーンです。
お腹~胸までの高さです。
お腹~胸までの高さで打つ ②の範囲
ただし、相手のボールが高く弾むボールであれば、コートから弾んできたボールは自分の頭よりも高くなってしまうので打ちづらくなってしまいます 😥 。その場合はその高さで打つという選択はしないようにしましょう。
3.膝~腰の高さ
この高さで打つのが一番難しくなります 😥 ので、この高さで打つというのを選択しないで済むように、ここよりもう少し上かもう少し下の高さのゾーンでハーフバウンドで打つという選択をするようにしましょう。
膝~腰の高さで打つ ③の高さ
メリット・デメリット
通常のショットとライジングショットの違いをメリット、デメリットを上げて説明します。
メリット、デメリットを理解して、どういったときに使えばよいかイメージしてみてください。
メリット
1.早いタイミングで返球するため、相手の時間を奪える
「返球のタイミングが早い!間に合わない…」と思わせて、相手の時間を奪えます。
ライジングは、より早いタイミングでボールを返球するので相手に余裕を与えません。
いつもよりもワンテンポ早くボールが返ってきたら、相手は打つ前にしっかり用意ができず、慌ててしまってミスをする可能性が高くなります。
ダブルスの場合、相手の速いサーブに対してストロークを後ろで打っているとポーチにつかまりやすくなりますが、早いタイミングで打てば逆に相手にプレッシャーをかけることができます。
ライジングはタイミングとしてはほんのわずかな時間ですが、効果としては大きいものがあります。
早い返球は相手の時間を奪う
2.相手の力を利用して、より少ない力で打ち返せる
「強いボールを打てば打つほど、相手から強いボールが返ってくる」というのは相手からするとイヤですよね?
下の画像は、伊達公子さんが選手時代に練習をしているところです。
相手の打ったボールがバウンドして、頂点の手前で打つのでまだボールに相手の力が残っています。
その状態でブロック壁のように打ち返しますので、より少ない力で強いボールを打ち返すことができます。
伊達公子さんのライジング
ブロックするのには、あまり筋力はいりません。むしろ、ある程度脱力した状態から相手の力に自分の力を足して押し込んでいく打ち方です。
163cmと世界のトッププロの中では小柄な伊達公子さんは、海外の大柄な選手を相手に活躍し、1度目の現役時にはWTAランキングのシングルス自己最高位が4位にまでなりました。
ほかの選手にはないライジングショットを武器にしていたからです。
ライジングショットは、少ないパワーで打てますので体力の温存をすることにもなります。
3.角度のついたボールを打てる
「鋭角なショットが来るので、走らされる…追いつけない…」と相手を動かすことでオープンスペースを作ってその次のボールで決めたり、打ったコースが良ければそのままポイントが取れたりします。
ライジングは、通常の位置よりも半歩踏み出した位置で打ちます。それだけネットに近い位置で打てるということです。
テニスでは、ネットに近くなればなるほど、角度のついたコースを狙いやすくなります。
(と言っても、ライジングはボールが上がる途中で打つために打点が通常よりも低くなりますから、ライジングの技術が身についていないと角度のついたコースを狙いやすいとは言えませんが 😥 )
4.相手の深いボールに対しても返球できる
攻撃的な面ばかりでなく、相手が深いボールを送ってきた守備的な状況のときにもライジングは役に立ちます。
伊達公子さんが一度目の引退をしたころは、まだトップ選手でも打つ選手が少なかったのですが、今ではライジングショットはふつうのショットになりました。
一般のプレイヤーでも、使う方が多くいます。
というのは、いまのテニスは“トップスピン回転”をかけて打つことが多くなり、バウンド後のボールがよく跳ねます。そうしたボールがベースライン近くの深い位置に入ると、相当下がって打たないと打ちやすい高さの打点で打てなくなってしまっています。
さらに、下がってしまうと今度は相手からドロップショットを使ってポイントをとられてしまいやすくなります。
そこで、深いボールに対してライジングショットを使うことで、位置を下げずに対応するようになったのです。
ライジングショットを上手く使っている選手の一人が、錦織圭選手です。
錦織選手は、ライジングショットを使い、テンポの速い、高速ラリーを展開するプレーを得意にしています。
錦織選手は、ベースラインの1~2m後ろでではなく、ベースライン上のポジションでライジングでトップスピンをかけてハードヒットしています。
ライジングを使った高速ラリー
画像 Instagram
デメリット
メリットとしてあげたポイントは、そのまま状況によってはデメリットにもなるポイントです。そうした点も頭に入れておきましょう。
1.タイミングが難しい(早い準備が必要)
ワンテンポ早く打つ分、自分も通常よりも早い準備をして打たなければなりません。
通常、ベースラインから少し下がった位置で打っているのを、一歩内側で打つとなると相手からのボールが速く感じてしまいますので、構えをいつもよりも早く準備しておかなければなりません。
早い準備が必要 テイクバックはコンパクトに
(Martina Hingis Photo : Steven Pisano )
タイミングを速くするためには、大きくテイクバックするのではなく、できるだけ小さくテイクバックするようにします。
2.面を合わせる技術が必要
ライジングでは、相手のボールを壁でブロックするように返すために自分は少ない力で強いボールを打ち返せるのですが、まだボールにスピードがある状態を打つのでボールの勢いに負けてミスにつながる可能性が高くなります。
また、角度をつけて狙いやすいライジングではありますが、面を合わせる技術がないと自分が思ったところへコントロールができないので、角度をつけようとするとかえってアウトのリスクが高くなってしまう可能性があります。
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ライジングショットの打ち方
ライジングショットは、通常打っていたストロークとはタイミングやスイングが違いますので、すぐに身につけるのは難しいかもしれません。
しかしライジングショットが打てるようになれば、今よりもずっとレベルの高いテニスになるはずです。
最初からすべてのボールをライジングで打つ必要はないので、いつもよりも「少しテンポが早い」程度で十分です。
しっかり面を作って、自分が狙う場所へコントロールして打てることを目標に練習していきましょう。
打ち方 ライジングは「水平」&「タイミング」
どのようにしたら、ライジングショットを打つことができるか説明していきます。
1.「水平に振る」
ライジングショットの打ち方のポイントとして、「あまり下から振り過ぎない」ように気をつけましょう。
下から振り過ぎてしまうと、ボールが上方向に上がり過ぎてしまいます。
イメージとしては、水平に振るような「レベルスイング」を心がけます。
バウンドしてくる打点を予測して膝を曲げて自分から打点に入っていき、ラケットを上げておいてバウンドしてきたボールに少しだけ下から面を合わせたら、体を回して「レベルスイング」をします。
そうすると、多少ボールに回転がかかってそのまま真っすぐ飛んでいってくれます。
「レベルスイング」は、インパクトと振り終わりのフォロースルーのときにラケットヘッドの高さがあまり変わりません。
レベルスイングで振る
下の 画像を見て、スイング軌道をイメージしてくだ さい。
スイングの振り終わりまで、腕と手首の形を保ったままとなるように意識しましょう。
手首は、「コック」が起きた状態の形です。
この形でレベルスイングで打つことでしっかりした当たりになっていきます。
コックについて、よくわからない方はこちらの記事をご覧ください。
まずは、お腹~胸までの高さで打つことを最初の目標にします。
そうしたらネットの高さが自分の腰位の高さになるはずなので、ボールを少し打ち上げることによって必ずネットを越していきますので、ボールの威力をうまく伝えることができればベースラインまで飛ばせるようになります。
「振り上げる」ようにスイングしてしまうと、回転はかかりますがボールに威力は出ません。
必ずレベルスイングをするようにしましょう。
2.タイミングの取り方
ライジングショットは、タイミングの取り方が正確でなければなりません。
ボールが上がってきたところをピンポイントで打つ!という集中が必要です。少しズレるとミスヒットになってしまいます。逆に、タイミングが上手くいけば簡単に飛ばすことができます。
早くテイクバックをしておいて、タイミングは、バウンドの直後を打つので「パ・パーン」のリズムで当たるように練習してみてください。
最初の「パ」がバウンドで、「パーン」がインパクトです。
バックでも、同じように打てるように練習しましょう。
相手からすると、バックはライジングがないとわかれば、そちらへボールを集めてきます。片手バックハンドの方であれば、スピンでなくてスライス回転で打ってもいいです。
ライジングショットの打ち方は、こちらの動画を参考にしてください
「ライジングは『タイミング』&『振り方』」Tennis Rise テニス・レッスン動画
練習方法
ライジングショットを身につけるためには、段階的に練習をしていきましょう。
1.手投げでキャッチ
2人でやる練習です。
1人の人に下手でボールを投げてもらって、ボールをキャッチします。
キャッチするのは、ラケットでライジングを打つ位置(体の横)となるようにします。
ライジングの位置でボールキャッチ
ボールのバウンドを予測して、細かく足を使っていい位置に入るようにしましょう。
取りやすい場所だけでなく、いろいろな場所に出してもらうとより練習になります。
2.ラケットで練習
最初は手投げ、もしくはやさしいボールとなるようにラケット出しでボールを出してもらい、トップの打点で当てる練習をします。「パ・パーン」のリズムで打つことを意識します。
慣れてきたら、トップの打点で面を作っておいて「レベルスイング」で振り抜くようにします。腰の回転を意識して打ちましょう。
1人の場合は、自分でボールを下へ落としてボールが地面にバウンドしてから上がってくるところを打つことで練習ができます。
予測力
ライジングショットを自分のものとするには、基本の技術の習得は当然ですが、ほかにも2つ必要なものがあります。
相手から飛んできたボールがどの位置に飛んできて、どのくらいバウンドするのかを予測する「予測力」と、そのボールのポジションに素早く動く「フットワーク」です。
ボールの予測について、伊達公子さんと松岡修造さんによる動画を参考にしてみてください。
松岡修造×クルム伊達公子 「クルム伊達公子の予測の凄さ」
少し古い動画ではありますが、松岡修造さんが伊達さんに次に来るボールを事前に予測させています。
この動画の中で、伊達さんは相手の構えと体の向き、バランス、目の動きでボールを予測していると語っています。
一般プレイヤーは、たくさんのボールを打つことで経験を重ね、予測能力が高まっていきます。ただ、伊達さんの予測するときのポイントをヒントにすることで、より予測をしやすくなってくるかもしれません。
練習や試合のときに取り入れてみてください。
深いボールも下がらずに打つ
ベースライン近くに深く来た相手のボールに対して、下がってストロークで打つというのは「しっかり打つ」という意味ではよいのですが…
下がる時間がなかったり、下がる体力がないというときには、下がらずにライジングで打ちましょう。
ベースラインぎりぎりに来たボールは、ショートバウンドで「パ・パーン」と打つタイミングでそのまま打ち返していけます。
「ハーフボレー」と似ていますが、ハーフボレーはボレー面を作って、ボールに対して「パ・パン」と面を保ったまま合わせていきますが、ライジングのストロークはスイングしていきます。
スイングをして、ボールにスピン回転をかけることで、コート内に落ちてきて納まるようになります。
(打ち方のポイント)
打ち方には、2つのポイントがあります。
1.「インサイドアウト」のスイング軌道
このときのラケット軌道は、「インサイドアウト」のスイングです。
「インサイドアウト」というのは、下の画像のように、ラケットのフォワードスイング(前への振り出し)の際に、自分の体のインサイド“内側”からアウトサイド“外側”にスイングします。
ラケットが背中側から
打点に向かっていきます
そして、体の外側でインパクト
2.常にフラット面
上の画像のラケット面は、常にフラット面となっているのに気がついたでしょうか?
打ちたい方向に対して、常にラケットがフラット面のままスイング中移動していくのが重要です。
上の2つのポイントを押さえて、インサイドアウトのスイング軌道で打てるようになると外から内側へボールが入ってくるようになります。
これがまっすぐボールに当てるだけですと、自分が思うよりも右側にボールが飛んでいってしまいます。インサイドアウトで振り切ることで、ボールが外から内側へと回転して球筋が外から内へと飛ぶようになります。
【フォアスイングの場合】
【バックスイングの場合】
トップスピンの打ち方やスイング軌道イメージについて、もっと知りたい方はこちらをどうぞ
深いボールを下がらずにライジングで打つ方法の動画はこちらです
「深いボールを下がらずに打つ方法(ショートバウンドで打つ)」Tennis Rise テニス・レッスン動画
高く弾むボールもライジングで打ち込む
相手からベースラインに高く弾んできたボールは、力の入りにくい打点で打たされることになるので、まずはポジションを下げて打点を顔の近くの高さまで落として打ち返すことようにします。
けれども、もし自分に少し余裕があるようでしたら、少し前に行って上がってきたボールをライジングで捉えて、顔の高さで打つようにしてみましょう。
相手のボールの勢いがあるうちに打つことになるので、ボールを押さえるような打ち方になります。
余裕があれば、前へ行きライジングで打つようにしましょう。
しっかり押さえることができれば、その分下がらなくても済みますし、ボールの上がりっぱなを打つことで相手の時間をなくすこともできます。
(打ち方のポイント)
打ち方には、2つのポイントがあります。
1.直線的なスピンで
直線的にスピンで打つことを目標にします。
「ワイパースイング」で水平に振り切るようにします。
ラケットヘッドを少し下に向けながら、高い位置から横に振り切っていくことでボールを押さえながら打つことができます。
直線的なスピンで返球する
あまり打ち下ろそうという意識があると、ラケット面が下方向に向けてスイングしてしまうので、ネットしやすくなってしまいますので注意しましょう。
2.予測した位置で待つ
ボールが弾む前にそのボールがバウンドしてくるところを予測して、先に自分の打ちたい打点で待てる状態を作るようにしましょう。
「バウンドしたあと、ココに来るな。」
と予測した位置で少し膝を曲げて、ラケットを上げた姿勢で下の画像のような状態で待っておけるようにします。
フォアでも、バックでもできるようになりましょう。
フォアで待つ
バックで待つ
高く弾んだボールへのライジングの打ち方は、こちらの動画を参考にしてください。
「高く弾むボールを直線的なスピンで打ち込む」Tennis Rise テニス・レッスン動画
ベースラインに弾んできた深くて、高いボールの返球方法はほかにもあります。こちらの記事をどうぞ
「コアスイング」を使うと効率のいいストロークが打てます!>>> 少ない時間でも上達するテニスの磨き方
まとめ
ライジングショットは、プロだけでなく、一般のプレイヤーでも中級者位なら使っているショットです。
ボールを待たずに相手の時間を奪うタイミングで打つので、あまりボールの質が良くなくても相手を追い込むことができますし、防御のときにも下がらずに打てるので、覚えて試合で効果的に使っていきましょう。
ライジングを身につけるために一番大切なのは、ボールを打つ「タイミング」を覚えることです。「パ・パーン」というタイミングで打てているかに注目して、練習を重ねていってください。